コーヒ豆が切れたので部屋着にジャージをはおり部屋を出た。
家より徒歩1分のこじんまりとしたコーヒーショップには開店当初から通っている。
シャッター通り商店街にオープンしたのが8年程前で、
カウンターのみの座席は10人も座れば満席である。
当初こんな寂れた商店街への出店を不安視していたが、
コーヒーの美味しさに加え丁寧な接客と端正な容貌は、
程なく女性客を中心に繁盛店となった。
焙煎した豆を業務筋に卸す仕事も始め、
「お陰さまで早6年めです」と挨拶されてから少し経ってのこの事態
店が狭いためお客を入れることも叶わず。
店頭でのテイクアウトと疲弊したカフェ等への卸し業務で凌いでいる様に見えた。
一時状況が少し好転しかけた頃、窮状?を見かね
座席の間隔を空けたり時間制でお客さん入れてみたら?と声掛けもしてみたが、
色々考えましたがお客様には年配の方も多いし、
ここで生きていくと決めているので
感染リスクがある以上安易に入れられないと熟考したであろう答えが返ってきた。
それから数ヶ月、いよいよ全面解除のタイミングで先日店を訪れた際、そろそろ?
と水を向けると、聞かれると思ってましたと現状を話してくれた。
コロナ禍で時間が余るので、腐らずコヒーの研鑽を重ねスキルを粛々と積み上げていた。
そんな彼を偶然著名な専門家がSNSで評価してくれた。
すると手探りで始めていた通販に瞬く間に火が着き、
今では北海道から喜界島(奄美群島)まで発送しており、
「御覧のとおりです」とカウンター席にうず高く積まれた発送資材に顔を向けた。
いま一人で手が回らない状態だそうだ。
「あの頃よりコヒーも美味しく成ってると思います」と差し出されたコーヒー豆を手に、
何かほのぼのとした心持で家路についた。
災い転じて福となす‥か
彼の努力が福を呼び寄せたんだろうな‥‥
そんなことを想いながら豆を挽く、確かにそのコーヒーは昔より香しかった。
ところで私は何も変わってないな 💦